早明浦ダム情報

早明浦ダム情報

早明浦ダム

早明浦ダム(さめうらダム)は、高知県長岡郡本山町と土佐郡土佐町にまたがる、一級河川・吉野川本流上流部に建設されたダムである。
独立行政法人水資源機構が管理する多目的ダムである。型式は重力式コンクリートダム、高さは106.0メートルで有効貯水容量は2億8,900万立方メートル、利水容量は1億7300万立方メートルで、これは香川県内の全ため池(15,000ヶ所)の総容量に相当し、吉野川水系における水資源施設の中核をなす四国地方最大のダムである。吉野川の治水と四国地方全域の利水を目的に建設され、このダムの水運用は四国地方の経済・市民生活に極めて多大な影響を及ぼす。このため「四国のいのち」とも呼ばれ、四国地方の心臓的な役割を果たす。ダムによって形成される人造湖はさめうら湖と呼ばれ、2005年(平成17年)には本山町・土佐町・大川村の推薦により財団法人ダム水源地環境整備センターが選定する「ダム湖百選」に選ばれている。

エピソード

ダム完成時、当時の高知県知事であった溝渕増巳に公団は記念碑の銘を揮毫(きごう)するように依頼した。この記念碑がダム右岸に建つ「四国のいのち」の碑であるが、当初は「四国はひとつ」と刻まれる予定であった。しかし溝渕は「水は一つになったが、他のことはまだ一つになっていない」として「四国のいのち」と銘を変更したというエピソードが残されている。この溝渕の言葉は、後年水不足でダムが枯渇した際に繰り広げられる四国四県同士の対立を図らずも暗示するようであった。またもう一つのエピソードとしてダム建設中の1973年に香川県高松市で深刻な水不足が発生し(高松砂漠)、水不足に対処するため香川選出の衆議院議員であった自由民主党の大平正芳外務大臣(当時)と日本社会党の成田知巳委員長(当時)が、水源である早明浦ダムが完成していないにもかかわらず香川用水への早期通水を当時の水資源開発公団総裁であった柴田達夫に要請するという一幕もあった。

利水

利水目的では香川用水・吉野川北岸用水・愛媛分水・高知分水を利用し四国四県へ供給する。かんがい用水は高知県を除く三県に対し平均で通年毎秒3トン、農繁期に毎秒11.96トンを供給。上水道・工業用水道は四国四県にそれぞれ一日量で440,000トン、1,420,000トンを供給する。

  1. 徳島県への利水配分率は48%と最も大きく、吉野川北岸用水の水源として利用されるほか、慣行水利権分の不特定利水補給が行われる。
  2. 香川県への利水配分率は29%で、池田ダムより取水した吉野川の水を香川県全域に送水している。特に上水道依存率は50%と高い。
  3. 愛媛県への利水配分率は19%。早明浦ダム完成によって徳島県への慣行水利権分の不特定利水が補給されることから、柳瀬ダム完成時に愛媛・徳島両県で合意していた柳瀬ダムの責任放流が廃止され、間接的にではあるが川之江市・伊予三島市への利水が強化された。
  4. 高知県への利水配分率は4%と最も少ない。ダムの水は瀬戸川から地蔵寺川へ2つの取水堰を通じて四国山地を縦断し、鏡川に建設された高知県営ダムである鏡ダムに流路変更され、高知市の上水道に供給される。

早明浦ダムによる各新規用水の総合開発量は年間8億6,300万トン。とりわけ、香川県には大きな河川が無く、同県の水利用は、水道使用量の50%を占める香川用水へ依存している所が大きい。香川用水は、この早明浦ダムを中心として開発された新規用水であり、香川県の水利用において早明浦ダムの果たしている役割は非常に大きいといえる。しかし同時に早明浦ダムの渇水は、まず香川県の水事情に大きく影響する。また、ダムが高知県長岡郡本山町にあるため、渇水になると高知県内も生活用水に影響があるのではないかと思われがちだが、高知県側への利水配分は前述の通りわずか4%に過ぎず、状況によっては高知分水への放流を完全にカットすることもある。このことより高知県側は早明浦ダムの渇水による影響は少ないと言える。

さめうら湖

早明浦ダムによって形成された人造湖であるさめうら湖は、日本の人造湖の中でも屈指の規模を誇る。総貯水容量3億1,600万トンは日本で第8位、ダム湖の面積である湛水(たんすい)面積750ヘクタールは日本で第13位であり、西日本のダムでは奈良県の池原ダム(池原貯水池)に次ぐ規模であり、四国では最大である。
さめうら湖は高知県北部の観光地として多くの観光客でにぎわう。春は湖畔をソメイヨシノが彩り、花見客が大勢訪れる。また毎年秋には「さめうらの郷 湖畔マラソン大会」が開催され、例年700人のランナーがダム堤体上をスタートして健脚を競う。さらにブラックバスの釣りスポットとしても知られ、四国地方のバス釣り大会の会場としても頻繁に利用されるほか、カヌーやボート、さらに他のダム湖では利用が禁止されていることが多い水上バイクの利用も可能である。しかしさめうら湖については利用する際には地元のNPO法人などで組織される「早明浦ダム湖面利用者協議会」への登録が必要になる。登録には年間登録と1ヶ月登録があり、年間登録については一般男性が4,000円、一般女性・高校生およびダム所在地(本山町・土佐町・大川村)住民が2,000円、中学生と嶺北漁業協同組合員は無料となっている。また船舶を利用する際にも船舶登録が必要であり、1艇あたり1,000円が必要になるが、こちらは無期限有効である。バス釣り大会などイベントを催す際には事前予約が必要である。このように登録制になっている背景には、さめうら湖が四国全域の水がめとして極めて重要な位置を占めているためであり、水資源保護の観点から行われている。
この他早明浦ダムは春・夏・冬の夜間、ライトアップを実施している。春季は3月20日から4月15日までの間19:00から23:00までと、ゴールデンウィーク期間(4月28日から5月10日)までの19:00から22:00。夏季は7月20日から9月16日までの20:00から23:00。冬季はクリスマスから年末年始(12月22日から1月6日まで)の18:00から21:00の間に行われている。夜間にライトで浮かび上がるダムの光景を見ることができるが、特にダム直下流に架かる橋およびその下の吉野川の河原からは、ライトアップされたダム全景を眺めることができる。河原へは車で下りることも可能であり、昼間には冒頭写真のように眼前にそびえ立つ巨大なダムを目の当たりにできる。しかし当然ながら洪水時やダム放流中は水没してしまうので(洪水調節中のダム写真を参照)、その場合は橋の上からしか見ることはできない。
早明浦ダム・さめうら湖へのアクセスは車の場合高知自動車道・大豊インターチェンジ下車後国道439号を西進、土佐町田井で右折して直進すると到着する。公共交通機関ではJR土讃線・大杉駅が最寄の下車駅となる。この国道439号は大歩危・小歩危・祖谷渓方面と石鎚山・松山市・四万十川方面を結ぶ観光道路としても重要な役割を果たしているが、所々未整備区間が存在する「酷道」であり早期の改善が地元より望まれている。ただし早明浦ダム付近は整備されている。

大渇水時の取水制限の履歴

平成17年

平成20年

平成21年

参考文献

貯水率情報